住所を教えていただいてひとりではじめてこの場所にきたとき、なにも考えずにこの広々とした景色をしばらく眺めていた。そうして帰りの電車のなかでスケッチブックを広げてエスキースをはじめた。
条件から家の大きさが限られてくるのはわかっているので、どのようにしたら狭く感じないかを考えていく。屋外の見晴らしを利用するだけでは足りない、そこで人の感覚を利用する。見通せる距離が長くなれば、部屋の広さがその分広がって感じられるもの。階段の踊場を少し広めにしてソファのある場所と視覚的に連続させる。
すきまもどんどん利用する。少し傾斜になっている地盤のために基礎が高くなるところがある。そのあたりに階段の踊場を持ってきて、床を少し窪ませて踊場下に小さな部屋をつくったのが左側の写真。右側の写真は小屋裏の収納。壁は設けずに家族の成長に合わせて仕切り方を考えていくので、最初の頃は柱が立ち並ぶ森のようでした(中央写真)。
写真撮影:田伏博